【昭和天皇「拝謁記」を見て】
お盆休みも終わりましたが、この間、NHKがニュースや番組で放送した「昭和天皇『拝謁記』」は、見ごたえがありました。
《間違いなく一級の資料》
私は、以前、NHKの記者で、皇室取材を担当していましたが、両陛下をはじめ、皇族方の本音は、なかなかうかがい知ることはできません。
それだけに、取材の腕の見せどころは、皇族方の考えを探ることなのですが、今回は、昔の昭和天皇のこととは言え、本人の考えが本当によく分かる一級の資料です。
同じようなスクープとしては、かつて「文藝春秋」が、『昭和天皇独白録』(戦前・戦中のできごとについて昭和天皇が語った談話録)をスクープし、大きな反響を呼びましたが、今回は、それ以上だと思います。
《人間らしい側面も》
特に、戦後、それまでの「君主」から「象徴」へと変わり、▽政治への関与ができないことに戸惑ったり、▽国民の目を非常に気にしたりと、これまで明らかになっていない人間らしい側面も分かりました。
でも、このときの初代宮内庁長官の対応が毅然としていたことで、「象徴天皇制」のあり方はぶれず、いまの天皇陛下へとつながっているのだと思います。
《他社もようやく後追い》
この特集に関して、今朝の朝刊で、いっせいに後追い記事が出ました。
NHKから「拝謁記」の資料提供を受けて、ようやく記事にできたのだと思います。
自分でも経験がありますが、この種のスクープは、入手してから読み解くまで本当に時間がかかるので、NHKは、何か月もかけて用意周到に準備を進めてきたと思います。
なので、資料提供を受けて、急いで後追いした他社の記事は、読んでみて、どうしても薄く感じてしまいます。
《NHK改革の声は大きい》
NHKに対しては、いま、いろいろな意見が出ています。
でも、元NHK記者だから言うわけではありませんが、こうしたニュースや番組を見ると、やはりNHKしか作れないなと思います。
秋の国会では、NHK改革も議論になると思いますが、NHKには自らの改革についても頑張っていただきたいと思います。