【SNS中傷をなくすには】

 プロレスラーの木村花(きむら・はな)さんが、テレビ番組に出演後、SNS上で誹謗中傷を受け、自殺したとみられる痛ましい事態が起きました。

 昔、メディアにいた人間として、背景にあるさまざまな問題を指摘したいと思います。

《表現に規制はかけられない》

 この問題を受け、高市総務大臣は、ネット上の誹謗中傷を抑止するため、投稿した人物を特定できるよう速やかに仕組みの見直しを進める考えを示しました。

 ここでのポイントは、“表現自体に規制をかけるわけではない”こと。

 「表現の自由」は、憲法(第21条)で保障される、極めて重要な権利だからです。

《投稿者の特定容易にし抑止》

 でも、表現には責任も伴います。

 表現が基本的人権を阻害するとなれば、「名誉毀損」などで裁判を起こすこともできます。

 でも、そこでのもう一つの問題は、匿名での誹謗中傷が多いこと。

 「誰が投稿したのか」割り出すには、今の手続きでは、裁判所を経由しなければならないなど、あまりにも時間と費用がかかるんです。

 だから、高市大臣は、投稿した人物を特定しやすくなるよう見直しを進めようというわけです。

 そして、それが抑止効果につながるという考えなんです。

《SNS事業者団体が緊急声明》

 今回の件を受けて、TWやFB、LINEなどのSNS事業者も動きだし、緊急声明を出しました。

 嫌がらせや名誉毀損などの禁止事項の啓発を実施し、違反があった場合のサービスの利用停止などを徹底するとしています。

 国の法規制ではなく、SNSサービスを運営する事業者がルールを作って抑止しようという考えですが、こちらも「規制の線引きをどうするか」など簡単ではありません。

 例えば、「バカ」という表現ひとつ取っても、『お前はバカだ』と言うのは問題ですが、『こんなバカな法案は撤回すべき』では正当な意見になるからです。

《リツイート開発者も後悔》

 それにしても…。

 いまの時代、SNSの悪影響(特にTW)で、乱暴な言葉や差別的な表現を平気で使うようになったと感じます。
 
 日本語の持つ本来の良さは「相手を思いやること」なのに、それが失われてきていることを危惧しています。

 TWでは、リツイート機能がそれを増幅させています。

 リツイートの開発者は、「嫌なヤツに嫌な印象をつけて広げていくのがこんなにも簡単なことだったとは思わなかった」として、『恐ろしいツールを開発した』と後悔していると言います。

 たしかに、事実関係が間違っていても、拡散して既成事実になるケースも多く、それが政治家になると、いくら説明しても「言い訳」としか思われないんです。

《裏を取らない政治家も多い》

 私は、昔のNHK記者時代、▽ものごとを言葉で表すことや、▽言葉の使い方を大切にすることを、徹底的に叩き込まれました。

 政治家になって、当時の経験がものすごく役立っていることを実感します。

 でも、政治の世界では、そうでない人も多く(内緒)、事実関係を調べないまま、「断定口調」で話す政治家の多いこと!

 政治の世界は、改めて何でもありだと思います…。

《リアルな番組などない!》

 そして、今回の件は、メディアにも責任があります。

 今回の番組は「恋愛リアリティーショー」と言うリアリティーがあるように見せるものですが、完全にリアルな番組などありません!

 台本はなくても、収録後の編集によって、演出効果を何とでも出すことができます。

 実際にはフィクション(創作)に近いのに、視聴者には、リアルだと思わせるところが危険で、制作側は、そのことを明確に示すべきだと思います。

 さらに言えば、放送後の影響も考えていないだろうし、何かあっても、責任を取らない(検証しない)。これが実際のところだと思います。

 今回のような痛ましい事態を受けて、投稿のあり方を、今一度見直すべき時期に来ていると思います。

 そして、実効性ある取り組みがなされることを期待しています。